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2007年06月02日

#1 かくれんぼ


少年時代の僕らはとても無邪気に幼く、
単純な遊びにも夢中になって遊んでいた。

休日の小学校の校舎を使ってほんの数名で
かくれんぼをして遊ぼうとした。



鬼が決まり、
いざ皆が隠れ始めた。


そんな中、

女の子でかくれんぼに熱心なE子は
毎回見つかりにくいところに隠れる
かくれんぼのプロだった。


以前には、
いくら探して見つけることができずに
皆が探すのをあきらめかけていると
急に現れたりして皆を驚かせたりしていた。


なので聞いてみた。


「E子ちゃん、いつも全然見つかんない。
 いつも、どこにかくれているの?」


「秘密よ」


教えてくれない…


またあるときにはいくら探しても
いないと思ったら…

みんなのことは放っておいて
家に帰っていたという困らせ者だったりした。


いつの頃からE子を見つけ出すことが、
鬼になった人の楽しみになっていた。


それでも一向に見つからないE子を
次第に皆、特別視するようになっていた。


それでも、E子を差し置いて、
かくれんぼしようものなら、
幼心にも、戸惑いと動揺があった。

何か皆で遊ぼうというときには
E子は何の疑問もなく参加しようとして
くれたし、なんと言っても長い間、
一緒に遊んできた、遊び仲間で
あることは曲げようのない事実だった。


そうだ、E子はかくれんぼに
限ってのスペシャリストであり、
他の遊びにも男女の違いなど意識せずに
無邪気に戯れられる、ごく普通の児童だった。


他のメンバーとなんら、変わらない。
他の仲間だって、一つや二つ、
得意種目はあるのだから…、

それを思えば、


E子の特技も個性なんだとそう、
思えなくもない。


ただ、E子のかくれんぼテクは

仲間内では神懸り的な域にまで
達していたことを薄々気付いていた
ものも少なくない。

ただ、
E子の手の内を暴くことも目にすることもできず、

誰にもその神髄は計り知れないままだった


E子は、いつも皆が見つかった頃に、
ひょっこり顔を出すので探し出す
という行為すら成り立たないまま、
終わってしまっていた。




けれども、

一緒に遊ぶことに何も理屈なんて要らない。


純真無垢な幼年期に、
ちょっとした特徴の違いで他者を疑い、
遠ざける心の防壁が
築かれているはずもなく―。






今回は僕は鬼だった。10数えてから、


「もーいーかーい」


威勢よく聞くと


「まーだだよー」


もう一回10数えてから、


「もーいーーよ」


元気よく皆から返事があった。

このときE子の声も聞こえたので
僕ははりきって今度こそE子を見つけて
やろうと思っていた。


そして…


みんなが次々と見つかっていく。

そう、E子が隠れるのが得意なら
僕は見つけるのが得意なのだ。



だけど…

E子以外の全員が見つかっても
肝心のE子がまったく見つからない。

見つかる気配すらない。


E子の業は、僕のそれを優に上回っていたようだ。



「またE子が最後かー、今度こそはみんなで探して
 E子の秘密の隠れ処を見つけてやろう」


痺れを切らした見つかった家の一人の提案だった。


それで、

みんなで探すことになった。


これが、何かの引き金だったかもしれない。
ただ、その時の僕らに何がどうの、と
判断できるほどの冷静さも、状況認識も
持ち合わせていなかったのだ。



色々なところを探したがE子はどこにもいなかった。



みんなが不安に思って大きな声を出して
E子の名前を呼んだ。


そして、僕も、


「Eー子ちゃーーん」


何度も何度も呼んだ。


「Eー子…―。」



けれど返事は一度もなかった。


しばらく、皆は遊びの延長で探しまわったが

夕方になってもE子は姿を現さなかった。



「どうせ家に帰ったんだろう」

痺れを切らした一人が、そう漏らしたが、
同じ想いを持っていっていた者は少なくなかった。


もう皆が探し疲れて、
そんな風にそれぞれの帰路へと…

幼い体躯と精神には、長時間の集中と体力消耗は
酷だったから…。


僕だけは残って、E子を必死に探していたけど
結局、E子は見つからなかった。


まるで、どこにも居ないかのような
そんな虚ろな思いすらよぎった。


いつになく、冷たい風が肌を撫でた。

今になって、全身がホコリまみれに
なっていたことに気付いた。


はじめからE子は…?





翌日、E子は学校に来なかった。



E子はいったい何処に?




E子は行方不明になった。



神隠し… …?


そんな噂が流行ったこともあった、
その手の話に熱心なクラスメイトは
女子を中心に少数派ではなかったから。


考えてみれば、E子はちょっと不思議系な
ところがあった気もした。

自分の世界を確立してそこに生きることに
熱心になってしまった人間には、

通常の概念は当てはめられない。


それを毛嫌いするのか、
絶対的な個性的ととらえるのか…



いくらE子がかくれんぼの達人でも
探せないところに隠れてしまっては
もう探しようがない…


これでもう、E子は…

僕は、E子の完璧な雲隠れだか、霧隠れだか、
姿を暗ます神業に心を奪われていた。

一時期、僕の中での印章的な出来事となった。
E子はある意味で、僕の憧れになっていた。



けれども、時間の流れの早さは無情なもので
成長する早さと若さを失う早さは、
極めて短い時簡に感じるそれと似ているように。


僕らはあっけにとられたまま、
月日の経過とともに多感な時期には
他の関心事、新鮮な話題や異性への意識の芽生え、
未来の夢に向かって何かに没頭する充実さに
次第に幼き日々は記憶の片隅に追い遣られいった。、


そして、いつしか


E子のことを忘れてしまった。



幼さゆえ、いなくなってしまった
ことの重大さを理解できなかったの
かもしれない。





………

それから幾年も経って…


僕ら成人式で小学校へ訪れた。


もう小学校は廃校なってしまうそうだ。

各々の思い出を語らいながら、
僕はふとE子のことを思い出した。

今まで心の奥にしまいこまれていた
空虚でも絶対的な存在感のシルエットが
そのときになって鮮やかに蘇ってきた。



たまらなくなって、


「Eー子ちゃーーん」


と少年時代のあのとき、
あの場所でやったのと
同じようにその名を呼んでみた。


すると、


少しの間…


意味のない行為だということは
わかっていたなずなのに…


背後から…、



「は、あぁーい」



あのとき、
あの頃のままのE子の声がした■











posted by EVILITH at 23:08 | TrackBack(0) | メインコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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