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2007年06月03日

#2 あそぼ、あそぼ…


仕事で疲れベットに潜りこむと
すぐに意識が途絶え、

気絶したように眠りに落ちた。



帰宅する家路にある階段では足どり重く
自分が疲れているのがわかり、

足を動かすのもおっくうだ。


いつものことだ。


そう…残業なんていつものことだ。

働き始めて、こうやって家に帰ってから
寝酒の一杯もせずにベットに倒れることが
日課になってしまっていた。

僕はこのことになんら疑問も持たずに過ごしていた。


なぜなら、仕事はそれなりに待遇良かったし、
仕事自体は、忙しいけれどつまらなくもなくて、
今度始まる新規プロジェクトのメンバーに
なっていたりと忙しいなりに充実していたからだ。


だからこの残業の意味も理解していた。




ある日、いつものようにベットに入り、
甘い眠りへと堕ちてゆく…


そして僕は夢を見た。



広く大雑把な風景でどうやら
自分は幼子のように視界がやや低い。

すると向こうに木造の小さな小屋が見えてきた。

物置小屋かな。

ここはどこだろう。

歩いては歩いては先に進もうとしている。

田舎のあぜ道のようなところや
獣道に入ったりと道なき道を行きながら
なかなか前に進めない。

なのに足どりは軽快だ。

しかもまったく知らないところなのに
行く道がわかっているように道に迷わなかった。


僕は少年に戻ったつもりで
なんだかよくわからないところを
さまよいながら、歩き続けていた。


するとまた、

はじめの小屋が見えてきた。

小屋あるところから
どうやってあぜ道に入ったのかも、
どうやって小屋のところにきたのかも憶えてない。

するとさっきとは違うものが見えた。


人影だった。


するとそれがいつの間にか自分の近くに来ていた。

どうやら幼い少女のようだ。

どんな顔をしているか見ようとしたけど


よくわからなかった。



ただ少女だということだけわかった。

僕はどうしてここに?を尋ねないで、


「こんにちわ」


と話しかけた。

すると少女はにっこりと微笑んで、


「おにーちゃん」


と僕の腕のすそをちょん、ちょん触れて


「あそぼ、あそぼ?」


ちょっとだけおおげさにふるまって、
そう可愛らしい声で言ってきた。


僕は快く、


「うん、いいよ。あそぼ」


――――――。


そこで夢から醒めた。


あれはなんだったんだろう。


あの娘はどこの誰だか全然知らない。


ただ夢の内容は鮮烈に憶えていた。
少女の顔を除いては。


まったくわからないけれど
童心に戻ったように無邪気な時を
過ごせたことをすがすがしく思っていた。


このときまでは何を疑うことなく、
ただ不思議な夢だと思っただけだった。





そしてまた深夜に帰宅し、
昨晩の夢のことも思い出すことなく
ベットに倒れた。


今夜はふと真夜中に意識が冴えた。


??ん…タン…カ??…


遠くで音がしていた。

聞こえているのだけれどよく聞き取れない。
ただそれだけでまた眠りに堕ちた。


……



そして次の真夜中にも夜も、目が冴えた。


カタン…カタン…カタン…


また何か聞こえてきた。
まあ気のせいだろ…


………


次の夜にも


カタン…カタン…カタン…


真夜中にいったいなんだろう。
不思議に聞こえてくる音を
耳にするのが日課になった。

別に生活に支障はなかったため
なんだろう程度にしか思っていなかった。



…………



何日かこれが繰り返された
ある夜に


カタン…カタン……


ん?

…トンッ…



あれ、音がかわった。


決まって3回くらいでしなくなる音、
なのに毎晩意識していなくても
聞き逃すことはない音。


明日どこでしているのか
確かめに行ってみよう。

そう思っていた。



……………



そして夜、僕は寝ないように待っていた。


けれども寝てしまった。


うつらうつらしているうちに、聞こえ始めた。


ピタッ、ピタッ、ピタッ


何だこの音は…


そしてこのとき気付いてしまった。

自分の身体がまったく動かないことに。



もしかしてこれは夢だろうか。
このときから不気味に思えてきた。


この音が。



………………


次の夜も、また次の夜も。


ピタッ、ピタッ、ピタッ


するとよく聞いてみると
どうやら段々とよく音が聞こえるように
なっているようだ。もしかして…


でも、気持ちを振り切った。
かねてから進めてきたプロジェクトが
佳境に差し掛かって、
そのことで頭が一杯になっていたから。

僕がこのプロジェクトメンバーに抜擢され
推進役としてもその実力を買われ、


今が一番、仕事に対して、やり甲斐を覚えていた。


今がそのときだったのだ。


厳しい毎日の仕事もやり甲斐さえ、
見いだしてしまえば、迷いが消え、
作業効率が抜群に上昇する。


ただ、いいこと尽くめでもなかった。
危機管理に万全を期しても、発生する問題、

順調に思われた、プロジェクト進行に
翳りがあれば、たちまちそれは破綻の一途を
辿ることも重々にしてある。

同期が、その災難で不本意にも
旗揚げ間近の企画が頓挫し
結果的に役員を降ろされた事例を
知っている。

今がその壁にブチ当たっている最中と言える。

肝心部分のミスが見落とされ、
関係各所が機能しなくなっている。

あと一手、ほんのあと一手


詰めを講じる手立てをさえ…


そんな一気に状況が改善され、
問題解決するような

納期もある。急がねば。


焦る気持ちと、逸る気持ち、
プロジェクトに対して気持ちが入っているが
故に失敗も、まして中断・休止なんてことには
したくない。してはいけない。


そんな気持ちの葛藤が

さらに僕を悩ませていた。



こんな言葉がある。


幸せは幸せを呼び、色々な人を幸せにする。
幸せのお裾分け…幸福の輪

逆に、

不幸なことは一気に重なって
次から次へと押し寄せる。
負の連鎖…不幸の感染



まさか…、

いや…しかし



…………………



そして、それが


ピタッ、ピタッ、


え?


……ピタッ


これは、まさか…




……………………



次の晩、


ガチャッ、ガチャッ、ガチャガチャガチャガチャッ、


鍵は間違いなく閉めていたはずだ。


………



……カチャッ、



…ギィーー


!!ッ



ピタッ、ピタッ



………………………



次の夜…


もしかしたら別の場所に泊まれば
よかったのかもしれない。

会社で徹夜するという手も…。


そいつが迫っていることが…もう、


わかっていたのだから。



でもなぜか、
自分の足は迷うことなく帰路へと。


吸い込まれるように。


あの音を聴くために、僕は。


いつしか、あの音を聴くことに
可笑しなことに安らぎを感じていた…

なんてことが…

少しはあったかもしれない。



そしてそれは性懲りもなく
やってきた。



ピタッ、ピタッ、ピタッ



玄関…


…………………………



ピタッ、ピタッ、ピタッ


リビング…



……………………………



迷うことなく…


ピタッ、ピタッ、ピタッ


そして寝室…



………………………………


今夜、何かが来る。 来るのか?


ピタッ、ピタッ、



…ピタッ



僕の寝ているわきで気配を感じる。

じっとこちらを眺めている。

自分は音しか聞こえない。
例のごとく、体中は硬直状態。
働くのは、先ほかあど僅かに
冴えた思考のみ。

額に浮かぶ、細かな雫…




ザッ、ザザ…


何者かが布団の中に入ってきた。

背中に冷たいものが流れるを感じる。

僕はこの縛りに必死に抗っている。


何かが足に触れる…

ねっとりと冷たい…

それは、氷に触れたときの瞬間的に
感じる冷たさではなく、
じわじわと来るものだ。


まるで、浸蝕されて腐敗していくような
見るのも気味が悪い感覚が伝う。


うぁぁぁ…

うめくことでようやく、
顔面の感覚機能を取り戻す。


ゆっくりと目を開いていくと




…………………………………




そこには…


眼球のない、しわだらけの老婆が
僕の足をつかんでいた。


僕は声にならない声をあげた。
がそれは、意味を成さない。



老婆はしわがれた声で、何かをささやく…


聞いてはいけない気がしていた…

けれど聞こえてきた。聞きたくなくても。


「あそぼ、あそぼ…」


ひたすら、そう
つぶやいているようだった。


僕がそれを聞いたとたんに、
ものすごい力で足首をつかまれ、
急激な勢いで引き込まれるような
激しさに全身が見舞われた。


そして、

ベットから下に何もなくなったように
一気に下へ落下するような感覚にとらわれた。


―底知れぬ闇の淵へ



老婆はただ、 不気味に


「あそぼ、あそぼ…」


ひっぱられる…
この世のものとは思えぬ
凄まじい勢いで足を引いてくる。


足だけが引き千切られ、老婆に持っていかれる
そう思わせる激痛を感じて気が狂いそうになる。


僕は最後の力をふりしぼって


「もうおまえとは遊べないッ」


と言った。

それしか言えなかった。



視界が暗くなり、意識が途絶えた。






気が付いたときには朝が来ていた。

僕は全身、汗でまみれていた。



足首には鋭い痛みと
小さな手のつかんだ痕が残っていた■










posted by EVILITH at 04:18 | TrackBack(0) | メインコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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