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2007年06月03日

#3 真夏の海


大学で知り合った
翔、美里、隆、耕介の4人は

とても気の合った親友だった。


今年も暑い季節がやってきた。



隆と耕介は遊びには余念がなく、

そして、今年の企画の狙い目は

やはり、

穴場の海水浴場に行くことだった。


色々と隆と耕介が調べたりしている
うちに話は盛り上がり、未だ行く前から

隆は海で波に乗る話や泳ぐ真似、

幹事の耕介が酒を持ち出して、

翔の家に のりこみ、
宴会を始め出した。


そこに調度、美里が居て、

すると隆が、


「せっかくのお楽しみ中、あたーぁす」


と冗談めかして言うと

翔と美里は、ちょっと恥ずかしそうに
眼を泳がせて、

それから翔が、


「からかうなよー」


と、隆を引っ張っていき、
さっさとさっき、耕介が並べておいた酒類を
手にして隆に促した。


隆は、気恥ずかしくなるとスグ次の行動を急ぐ、
翔の性分の知っていたが、ここは翔の根城。、
素直に従うのが得策というものだろう。


必然的に、はじめからその気だった飲みへ突入すた」。


美里は、冗談混じりにも茶化されるのは心外だった。


「やだなあー、もーう」


とかなんとか言って、憎めない隆にスマイルに
また、この軽いノリに少しうつむきがちな自分の心が
ほぐされている様で、嫌じゃなかった。

とまあ、密か笑っていたりして、

この二人のやりとりを静かに見守っていた。


そこに、耕介が

「美里ちゃん、度の低いヤツでいいかな?」


「あ、…うん」


「それと、おつまみもあるから。どうぞ。
 あとさ、グラスいいかな」


「えと、持ってくるね」


隆は、調子にのってすぐ、注ぎ口から直で飲もうとする。
美里がグラスを持ってきて、それぞれ手渡した、


「気が利くなあ、翔の野郎は…まったくうらやましいで」


「…」


耕介が美里を見て頷いた。


「これでいい」


「ん…何?」


「いやぁ、なんでもないさ。それじゃあ、
 何にもないけど乾杯」


「カンパーイ」


そろって4人そろってグラスを掲げた。




隆は、いかにも若者という感じの
軽快な青年で冗談もうまく、
ノリのいいヤツで、

普段は若い女性を口説く話や、
流行のファッションや
好きなアーティストの服装や、
ブレイクダンスのスタイル等色々と
研究して自分の個性を出したりしていて
自分ことだけ熱心かというとそうでもない、

いざという時に頼りになるのが
隆という男の本質だ。

普段は、お調子者のであったり、
意味不明なことを言っていると
思われがちだが、凄さがわかる人から
してみれば、魅力あふれる個性で
他者を圧倒するタイプの人間だ。

当然のことながら、誤解の認識まで大きい。

本人はそれをモノともしないバイタリティに
あふれている。勝手に好きなことを
窮めていってしまう人間。

隆は、翔の欠けがえのない友人だ。


以前にある講義で教授の間違いを
隆が指摘したとき、格好や言葉使いを
理由に不条理な言い分で隆の指摘を
誤魔化そうとしたときに
翔が冷静に指摘について示すと
教授は落ち着いて、隆に非礼をわびた。


それをきっかけに
勉強熱心で素直な翔にためらいなく話しかけ、
そして互いの価値観の違いをも
乗り越えた付き合い方ができる
友だち として互いの存在に
居心地のよさを覚えた二人だった。


美里はこんな二人が好きだった。

男の友情に憧れる美里は二人の
出会いも知っていた。

引っ込み思案な美里は耕介の紹介で
翔と知り合うことになる。


耕介は陽気なムードメーカーだ。

場の雰囲気を読んで、男女問わず
話しかけ、色々な顔と居場所を持っている。

情報通で噂話には詳しい。

隆と耕介が仲良くなるのは必然で、
芸術的な才能のある美里の作品を
翔が見惚れているところに
美里と翔を引き合わせたの耕介だった。


こうして4人は時折、大学近くの
翔の住むアパートによく集まっては
わいわいやることになった。


今年の春に翔と美里が恋人同士になった。

この二人の生真面目さにじれったさを感じた
隆が一役かって、二人を引き合わせ
耕介がムードを演出した。


翔にとっても美里にとっても
隆と耕介は最高の友人だった。




今回、夏に海行くと言い出したのも
隆と耕介で今年は高い波が来るから


「サーフィンで波に乗って、最高にキメて
 イカした、おねーさんを軟派するぜ」


と意気込んでいた。

隆ほどの容姿とオープンマインドな人間ならば異性と
よろしく打ち解けるのはそう時間かからないように
思えるが隆には隆の理論があるようだ。

それがネックになって機を逃しているのかもしれないが
隆自身は、若さのためかあきらめることなくブツかっていく
タフネスとガッツは見習いたいといつも思う、翔だった。


なんにせよ、

それにつられて、
翔と美里も一緒に海に行くことを楽しみにしていた。


耕介は、隆と共に共同戦線で挑むのかと思いきや、
隆に撃沈ぶり見たさに、爽やかに心の内で爆笑しようと
目を光られるという…

異性よりも、隆に興味があるのk、この人は…。



……………



そして、計画を立て始めた日から時が流れるのが長かったり

あっという間だったりして、何かを考えて期待に胸を弾ませて
いるときほど、楽しさを味わうことができ、その時間の短さに
一喜一憂するときを越え、


みんなで海に遊びにいく日はやってきた。





真夏の海…


まぶしい日差し…


高い波…



結構、シーズンがシーズンなだけに見渡せば
人が大勢居るけど、いい場所取りができて
いい感じに楽しめそうだ。


美里の水着姿が…まぶしい見える。


普段その気にならない翔も美里に目線が行ってしまう。


隆は美里のことをほめて、

耕介は恥ずかしがる美里の手を引いて
みんなでビーチバレーなどして遊んだ。


昼までは穏やかな海だったから
優しい波に楽しく戯れていた。


結構日差しが強く、美里は参ってしまった。


先に涼んでるわと美里は一人、
ホテルに戻って行った。


隆と耕介はいい波が来たから、
まだ海にいると言い、


翔が部屋まで付き添ってくれて、
そのあと二人の様子を見てくると、

美里を残してしばらくの間、
4人は離れることになった。



美里は一人部屋で涼み、
休んでいるうちに、うつらうつらしてきて
眠ってしまった。




……………



少しの時間経ってから、自分を呼ぶ声がすることに
気付き、覚醒づることになった美里。

いけない、せっかくの海に来たのに
眠ってしまうなんて…

と、ハッと目覚めると、


そこには、隆と耕介が何か、
病人を介護するように、


「美里、美里…」


と静かな声で呼び続けて


自分を起こしにきているのがわかった。


雰囲気がいつもと違い、無表情で虚ろに思えた。


「どうしたの?もしかして、
 眠ってしまったこと怒ってるの?」


すると二人が顔を合わせるので
何かをひそひそ確認しているので、


「ねえ、何かあった…の?」


と聞き返すと、


隆が口を開いた。


「よく聞いて、美里。
 俺たち美里が一人でホテルに戻ってから
 ずっと、波に乗ってたよね?」


「…うん」


「それでその後、
 俺たちを追って翔が海に行ったよね?」


「そうだけど、もしかして翔くん、
 迷子になっちゃたの?」


美里は隆が何を言おうとしているのか
わからなかった。


でも二人の顔が青ざめていたから、
なんかよくない事が起こったのではと
そんな感じがかすかにしてきた。


「えっと、その…翔が…」


と言いかけて、耕介が隆を止めた。


「翔くん、怪我でもしちゃったの?」


周囲は静まりかえり、隆と耕介は沈黙していた。
気まずく思った美里は


「どうしちゃったの?二人とも黙ったりして…」


すると耕介がゆっくりと話し出した。


「美里ちゃんがホテルに戻ってから
 少ししてから、高い波が来てね。
 もしかしたらこの夏一番の波かもしれない。

 それで自分たちは
 その波に乗ろうということになったんだ。

 自分たち二人は波に乗り慣れているけど、
 翔のやつはそうじゃない。

 だけど、気持ちが高ぶっていたから
 みんなで挑戦したんだ。

 自分たちは波にノリそびれてしまった。

 かろうじてここまでこれたけど、
 翔の姿は何処にもなかった」


「…翔くんは?ねえ、翔くんは!」


「いままで捜していたんだ、そうしたらあいつ、
 救助の人に 発見されたときにはもう…
 とっくに亡くなっていたんだ」


……ッ

………!!!



「いやあぁっぁぁぁあ!!」


声をあげて取り乱す美里の肩を耕介が腕が抱えた。
その感触は優しかったが妙に冷たいものだった。


「そんなぁ、嘘だよね…、
 あたしを驚かせようとしている
 だけだよねええーー??」


隆は黙って目を閉じ静かに首を振る。


「翔くうぅゥーーん、
 あああぁぁアァッっぅううああアァァ!!!」


耕介が澄んだ声で告げる。


「美里ちゃん、
 落ち着けといっても無理な話かもしれない。
 でもこれだけは聞いて。
 あいつ…翔は必ず、君に逢いに来る」


「ううっぐすっ…ンんッ…な、
 何を言っているかわからないわ… ぅぅぅ」


隆がハンカチで、美里の頬をぬぐう。
それはすでに湿っていた。


「翔くんはやっぱり生きて…、
 ああ、やっぱり冗談だったんだよね?
 そうだと言ってお願いだから…」


「そうじゃないんだ。君を悲しませたくないけど。
 以前に、自分が霊感が強いことはたまに言ってたよね?
 怖い話とかしてたときにほら、よく」


「…うん」


「だからわかるんだ。

 翔が死んでも美里ちゃんに逢いに来て、

 そして君を一緒に連れて行こう
 としていることがね」


「翔くんが逢いに来てくれるなら…あたしは…」


「落ち着いて、だから自分たちが
 美里ちゃんを守ってあげるから。

 それで異存ないよな隆?」


「ああ」


「それで美里ちゃんにお願いがあるんだけど、
 しばらくはホテルで 休んでいこう。
 もし翔が君に逢いに来ても決して扉を開けては
 駄目だからね。

 開けたら彼に連れて行かれてしまうから」


「耕介さんも隆くんも、どうしてそんなに冷静なの…?

 あたしまだ、 翔くんにお別れもしていないのに…」


「美里が、俺たちにとっても、
 翔にとっても大切な存在にかわりないからなんだ」


「それでも、あたし…できるわけないよ
 ……翔くんッ …ぐすッ…ゥゥん」


「ともかく、落ち着くまで休もう、
 そうしたら冷静になれるから」


美里は信じられなかった。注意深く慎重な翔が
自分から夏とはいえ気を許して
死んでしまうことになるなんて。

そして何より、いなくなってしまうことが
耐え難く信じられ様のないものだった。


気になったのは最期に翔が二人を心配して
海に向かったことだった。

あんなに優しい翔がもう
美里に微笑みかけることが二度となくなって
しまうことにもう、耐えることができず、

美里は肩を震わせて いつまでも涙をこらえ続けていた。


それだけ翔のことを好きだった。



……………



そして日の夜、遅い時間になって、
夏の日も落ちて、辺りが涼しくなってきた頃、
遠くで静かに波の音が聞こえ、
そのリズムに美里は心を紛らわせて、
ぼーっとしていた。

出窓の風鈴が何処か物悲しく、夏の潮騒相まって
静寂の夜に、輪唱となって僅かな風の声を鳴らせる。


隆と耕介は何かを待つようにじっとして、
たまに静かに二人だけで何かを
話しているようだったが、


そのときの美里は放心状態で聞こえなかった。


少ししてから、誰かが部屋に来る気配がした。


ドアを静かに叩く音がして、
美里はハッと目が醒めて、
部屋の入り口にゆっくりと向かった。


ドアの向こうで息をきらせているのがわかった。


誰だろうとドアノブを握って、思い出した。
耕介の言っていたことを、思い出した。


トントン、


「美里!いないのか?はぁ…はぁ…」


トントントン…


「翔くん?…なの?」


「ああ僕だよ。翔だよ!
 開けてくれないか?ふぅー…」


「今、ちょっと事情があって…。」


今すぐにでもドアを開けて翔に逢って
無事を確かめたい気持ちを抑えた。

…翔くんは本当にあたしを
 連れて行こうとしているの?…

翔の息づかいがすぐそこにあったから、
ドアに自分の身体を
押さえ付けて翔の声を聞いた。


「ミサ、一人にしてごめん」


翔は美里を二人きりのときに
ミサと呼んでいる。


ドアノブ握る手が震えた。


彼が死んでまでも自分に逢いに
来たのだとしたらそれだけで
嬉しかった。

嬉しくて悲しくて涙あふれ…
それでも気持ちを落ち付かせた。


「翔くん…今まで、いったいどこに…」


「ミサ…もしかして怒っているのかな?」


「そうじゃなくて、
 少し気になることがあって…」


「何かあるのかい?」


「どうしてこんな時間になってから
 ここに来たのかなって…」


「ああ、そのことでミサに話さなければ
 ないことがあるんだ」


翔の緊迫した空気が漂ってくる。


「だから、急いで来たけど、
 こんな遅い時間になってしまったんだ」


「うん、でもわたし翔くんが
 翔くんなのかわからないの…」


「ミサ、混乱させてごめん。
 こんな時間まで一人で待たせてしまって
 ごめんね。

 でもこれだけは言える。
 僕が君を想って一心にここに来ただけ
 なんだ、信じてほしいんだ」


翔は私が一人でここに居ると思っている…


「わたし、どうしたらいいか、
 今、わからないの…」


「君を誰よりも好きだから、
 ただそれだけで信じてもらう
 理由にはならないかな?」


「信じたいの。翔くんを…、
 でもあたし、どうすればいいのか…」


少しの沈黙…


「わかった。
 僕が混乱しているのと同じように
 君も気持ちの整理ができていないことを
 考えてなかったね。

 じゃあ、ドア越しでもよく聞いていて。
 辛い話になるかもしれない、
 でもよく聞いて欲しい。

 これは僕らの義務でもあると思うから。


 僕がこんな遅くまで。帰ってこれなかったのは、



 ずっと隆と耕介を捜してからなんだ。

 それで二人は発見された。

 今日はとても暑い日だったね。

 二人は僕らホテルで別れてから
 すぐに高い波にトライしたけど
 波に乗りきることはできなかった。


 二人は波にさらわれてずっと行方が
 わからなかったんだ。

 だから僕はずっと捜していた。

 捜しても見つからなくて、

 しばらく経ってから、彼らが発見されたんだ。
 彼らはビーチから結構離れた
 沖合いで発見された。

 結局、救助の人に連れられて、
 僕が二人に会ったのは霊安室だった。


 信じられなかった。


 ミサ!

 悲しいことかもしれないけど、よく聞いて!

 僕が二人の容態を確認すると…

 あの陽気な二人が何も言わずに静かに横たわり、
 もう二度と目を覚ますことはないって…。

 今、それで二人の家族に連絡して……遺体を…」


「嘘…、嘘だよ、そんなこと…」


「信じられない話かも知れないけど、
 嘘じゃない、今にきっとニュースで
 放送されているから確認すればすぐに…
 被害者が結構いたから。

 それで二人が…高い波にさらわれたって…」



美里はえっ?何…と言葉を失くした。

頬を冷たいものが流れた。


「そうじゃない…の、

 だって二人は…今、あたしの部屋に…」


「ミサ…?」



そのとき、美里は

ドアを開けることも、部屋に戻ることもせず
その場で膝を落とし、

ただ、うなだれていた…■












posted by EVILITH at 17:06 | TrackBack(0) | メインコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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