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2007年06月05日

#5 サッカーボール


小学校のある放課後、

遊ぶ児童の姿はただ一人の姿もなく、
誰もいなくなった校庭。



昼間なら子供たちのせわしない声が
聞こえてきそうな場所でも、

陽が落ち、


誰もいなければ


静かなものである。



部活動は遅い時間まで
行ってはいないため、
遅くまで校内に残る児童は
そうはいない。

昨今は

特に下校途中に無意味な事件に
巻き込ませないためにも
指導は徹底したものになっていた。




誰も彼も、姿を消してしまってから、

用務員が校内の見まわりを
していたときのことである。


渡り廊下を行き、別校舎に入ろうと
するところで校庭へと続く入り口の窓辺で、

ふと人影を見たような気がした。


渡り廊下の側面からでは校庭は
見渡せず、一部的にしか見えない。


ここに来て、空が夕焼けていることから
周囲は薄暗く遠くで見る人の輪郭は
ぼやけているものだった。


それにしても、


「まだ誰かいるのか」


ようし、注意してあげよう。

そう思った用務員は、校舎をまわって
校庭へと出る職員用の出入口に向かう。


向かう途中で校庭が見える
窓から外を眺めてみると、


「おや誰もいないのか」


気のせいだったのかな

そう思って見まわりを
続けようとしていたら、


ザザッ、ザッ、ッザザザ、ザッザッザッ…


何だろう?今度は音がしてきた。
砂を蹴る様な音が近くなったり、
遠くなったりしているので
再び窓辺から夕日に染められた
校庭を見渡したが誰もいない。


「なんだ気のせいか」


そう、思ってしまいたい気持ちが
どこかにあった。見回りといっても
有事でないに越したことはない。
まさか問題が発生することを
望んでいるわけもなく、
いつも道理、何事もなく
終わってくれれば

それでいい、と思っていた。


私ももう歳だ。
そんな、ハプニングやスリルを期待して
胸を躍らせるより保身、
今を何事もなくやりくりできさえ
すればいいと思っている。

そうだ、もう疲れることは
極力避け、いつものように、

いつものように…


しかし、何かあるのだとすれば
目をつむって済ませることは
余計に厄介な事になってしまうだろう。


誰もいない校庭の景色に変わりない
のにおかしなことだと思った。


自分では気付いていないだけで
疲れているのかもしれない。



それにしても、


変だな…、そう思う気持ちが

まだ校庭に児童でもいるのか…


としたら、放ってもおけない



誰もいないのに、何者かが校庭を
走り回っているような、そんな
気配がしてならない。


音は断続的に聞こえるが、
どうやら複数というわけでは
なさそうである。


暗くなってきたし、自分が目が
見えてないだけかもしれない。

とりあえず校庭まで行ってみるか。


………


そう思って校庭に出てみると、
音はそれほど大きくないこと
に気付く。

変だな、校舎にいたときの方が
聞こえていただなんて。


校庭を見ても誰もいなそうだ。
疑問に思って少し歩いてみると、


ザッザッザ、トン、カス、トンットンッ…ボン、

ザザッガス・ドか、トンットンットト…


よくわからないが砂を蹴る音以外にも
飛んだり跳ねたりするような
音が近付いてくる気配がしていた。


「おおーい、誰かいるのかー」


そう口にしてみる。
誰かいるようにしか思えなかった。

誰もいなければそれなそれで、
と思っていた。

すると、はたと音が鳴り止んだ。


「む、これは?」


するとさらに気配が近付いて来る。

背後に気配を感じて


振り向くと!!



何か…



居る!




影が迫ってくる…


どうやら小学生高学年らしい
背丈の少年が涼しい格好で
こちらに向かって走ってくるようだった。

その脚には、ボールが蹴られていた。


ボールを蹴りながら

こちらに向かって来るのがわかる。


「おぉーぃ。君だったのかい、
 さっきから校庭にずっと居たのは」


と呼びかけてみた。
近くまできた少年に


「こんな暗くなる時間まで校内にいたら
 危ないよ?もう帰りなさ…」


こう言おうとした。


しきりに少年が下を指差して
何かを伝えようとしているので

すその指の先に視線を移して見ると、

ボールがある…


「ああ、サッカーボールか。

 そいつをさっきから蹴って
 走り回っていたわけかだな。

 それがどうかしたか?」



……………


周囲は日が陰り、暗くなっていたから
今まで気が付けなかった。


意識して気に留めることも…


なったのだ。



「ん?」







「え?」



用務員は絶句した。



…少年がいったい何を蹴っていたのか
ということを。



そして、少年の頭部を確認した。


あるべきものがそこになかった。



周囲は夕日で赤く染まっていると思っていた…

その背の高さを少年だと思い込んでいた…



もう一度少年の足元を見やると、
ボールらしきものから
おぞましい形相で
こちらを見ていっるではないか…!


「…っひ」


それ以上は何かを詰まらせたように
のどから声出せない。



不気味で怪しい声が辺りに木霊した。


わっ、笑っている、のか…!?


その、おぞましい残響が、耳からは離れぬまま
脚に蹴られて転がり出した。


時折、途切れ途切れに、間が空き発せられる。

テンポと想像を絶す叫びとも、あえぎとも
知れない耳に障るやかましい音の連続が
余計に奇怪なものに聞こえた。


そしてそれらは何処かへ、

相変わらず蹴り続け、走り去った。



消え去って見えなくなった■










posted by EVILITH at 18:59 | TrackBack(0) | メインコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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