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2007年06月09日

#9 Loop-1


私は、友人と一緒に帰るところだった。



彼は、私と幼馴染で男子校に通っていて
普段は同じ学校生活というわけではない。


高校になってもたまにこうして
下校途中で行き会うことがあって、
帰り道も同じ方向だから、

まあおしゃべりなどして帰る事も
たまにはあるというくらいの付き合いだ。



学校に残って、放課後を過ごすともう
こんな時間だ。


辺りは夕焼けで染まり
今にも夕闇が迫って来そうだった。


今日はホントに遅くなってしまった。


お互い、部活でこんなに遅くになるまで
なにかしら勤しんでいる。

それはそれで、学業の後の時間を
どんな目的でも熱心に費やせるなら
充実した時間を過ごせるだろうとは
思っている。


少なくとも大人たちは、私たちが
内心、何を考えていても寡黙に
打ち込む姿を見れば
文句は言わないだろうし。


逆に、偉い、しっかりしてるとか
関心されても…、

結局今やってることが時間が経つと
いつまで好きなことやってるの?とか、
夢を見てないで現実を見なさいとか、
勉強しなさいとか…

すぐ口にしたがるようになっていく


心配で言ったとしても、
適切な未来へのアドバイスを
欠いたまま、そんなこと言っても
口うるさいと感じるだけだ…


だから私は余計なことは口にせず
他人と会話せず黙々とこなしていく
作業に没頭している時間が好きだった。



私が美術部で描き始めたら、
とりあえず時間かけてしまうので
遅い時間になっても無理もないかな。

他の部員が居なくなっても
残り少なくなっても気にしないで
続けているくらいだから。


でも、そんなには遅い時間までは
居られないからいい加減区切りを
付けていくのだけど。



彼も、同様の理由で時間を使って
いるみたいだ。


彼の場合は文化部と言っても、
将棋部と囲碁部のカケモチらしいけど…


正直言って信じられない。



何が楽しいの?こんな時間まで。



そりゃ、勝負するのはいいだろうけど。

こんな時間まで…毎日…


そこらへんはさっぱりで…



それで気になったから、
前に聞いたら、


どっちにも顔出してたら忙しいんだって。


まさか、彼も将棋や囲碁ブームの


影響野郎カヨ!!



確か、私も動機は不純だけど
始めたら始めたでそれなりに
続けることで自分だけの楽しみを
見いだせているのかもしれない。


彼も…そうなのか…な?




それで、

こないだ会ったときには、
飽きてきたら麻雀だって!?



ハァ!?



まあそんなことだろうと
思ってたけど…。




それで



3日くらい前にも会ったから、
聞いてみたら、
インターネット対戦は
楽しいって言ってた。





前とやってることが
色々かわってて楽しそうだなぁ





なんて思ってしまった。




私なんかは、
毎日違う作業ではあるけど、
絵を描くって時間かかるから
いつかそれに疲れて

まったく描きたくない日が
来てしまうんじゃないかとか
思ったりしてるし、


今は人物や風景を写生したり、
デッサンの後の工程で画材や
テクニックをいかに使うかの工夫で
絵のうまい下手があるかも
しれないけど、


そこから先になると才能が
どうのこうのとか、


本当の意味で自分の絵は描けているのか…


とか


自分の絵がどうの、というほど大したもの
描けているのか…


とか…



黙々と自分の世界と向き合うのは
好きだけど…

それを他者に認めさせるという積極性や、

コレが私の絵だ!なんてはりきって
言えるのか、わかんない。


あとは進学とか就職とかで……、


私の絵ってそんなに魅力あるの?って
疑ってしまうし。



自分のことをよく見せようとしなければ
相手に自分のよさ、なんて伝わらない。

言葉ではわかっているのに、わからない。

私は余計に押し黙って、
作業に集中するばかりで…

逃げているの…?


そんなつもりは、ないはずなのに。



………




そんなこと考えてても、

彼には言わない。



なんか恥ずかしい。





彼の持論は


才能や努力とかテクニックに
とらわれても意味ない、

自分のやりたいことと
なすべきことを重ねるだけだ。




だって。




しかも、彼は結構、いい成績してるらしい。


聡明って彼のような人を言うのかなぁ。





あーあ、私、何やってるのかなぁ…



彼とはこうして間は空いても
何かとは話するのはまあ、
自分を装う必要なかったから
かもしれないし、
彼が自慢とかしなかったし、

何より色々と本を読んでいて
何が良かったとか、

会話することができる
相手だったりしたからだ。


ジャンルは結構幅広い、
児童文学から現代小説、
漫画やライトノベル、
雑誌や専門誌、
ゲームのシナリオや
インターネット小説、
最近ではメルマガとか…


面白ければあさり放題だ。

こちらもムキになって色々読んだ。
図書館にも週に何度も通った。



家で過ごす時間は読書だけで
埋まってしまう。



ええと、勉強の成績は聞かないでほしい。


彼はいつ読んでいるんだろう。

少しは勉強してるだろうし、
時間をどう使っているのか?


不思議なくらいだ。



そろいも、そろって文化系…
青春とは言え…

相当な割合で、籠ってますよ、

それは、もう。


こんな私が、世間一般…

いやいや、同世代からだって、
異性としての魅力なんかは…


期待できない…と、思う。



うーん、こんな私が
人間的に魅力あるのかどうか…
自分でも疑っているのに…


親には悪いけど、…ちょっと、ね


人物っていうのは、
その人の人生を反映している…って

わかってるってるよ、そんなこと…



もー、ちょっと

私でも少しは、気にしているのに

望み薄で、意気消沈して…



ううー、いけない

すぐ、暗いふうに考えてしまうんだよね



このままじゃ、スパイラルだよ

気を付けないと…



彼はどうしてるのか
気になったから、
もちろん自分のことはおいといて


今日聞いてみら、



速読だって。ええーー




なんか効率いい方法ばっかり使ってるし。



彼の存在がアリエナイ、

世の中がこんなに頭のいい連中
ばっかりでできていると思うと


アリエナイ。




とはいいつつも、


眼鏡をかけた知的な彼の会話は

明るいものだ。


関心がついつい沸いてきてしまう。


最近彼はパソコンでフォトレタッチソフトを
使って部室のパソコンで写真や画像を
ナンヤカンヤやってるとか聞いた。



うわッ!!



私は筋金入りの機械音痴だ。
家電から携帯、
パソコンなんて器用にツカエナイ…

インターネット小説だって
頼んで印刷してもらったものを
読んでいるくらいのものだ。


今はお金がないからとか
誤魔化してるけど、
いつかバレる…


わかんないよ。


色々あるソフトは使い方
さっぱりわからない。


勉強じゃないのに、
頭が混乱して理解を断念。



最近でもないらしいけど、
絵を描くことも手描きよりパソコンで
やった方が速いって
ホントなの…!?

ライトノベルのカバーや扉、
漫画やゲームのイラスト等、
キャラクターデザイン…
最近はCGアートはよく見かけるけど…


ちょっと聞いてみたくなった。



手描きの絵をスキャンして色塗りは
画材無しでソフトできるって、

もしくは専用のツールで
画面に描けるとか言ってるし。



なんか面白そう。


私の知らなかった絵の方向性が
あったりするのかな。



別にアナログだからとか
こだわってないし、

ただディジタルが苦手だった
というか、なんというか…

でも結局は本を作るときに
技術的な印刷方法を用いるのだから
完璧に関わり無しにやっていくなんて
できないんだろうと…

画材など、だって手作りのものを
すべて使っているわけでもない。


使おうとした色が、混ぜてはいけない
絵の具同士で作る禁忌色だったら
その色自体は使えないことになる。


ディジタルがすべてを補えるワケではない。
けれどその力の大きさ否定すこともない。


人間の生活が、そうであるように…






こここ、今度、教えて!!!

教えてください…




もう好きな絵のためなら頭を下げてでも
教えてもらった方がいいかも。


そう思ったらもう口に出してお願いしてた。




え!?


いいの?本気だよ!!



慣れれば簡単だよ。とか笑ってるし。




なんか、私は今まで意固地になってたみたい。



彼は色々頼めば、

教えてくれるかも知れなかったのに。


ちゃんと、

自分が今悩んでることも
ちょっとは話してみようかな…



そう思って
見上げた空はもう暗くて
よく辺りは見渡せなかった。


でも、
ぽつぽつ見える光は
妙に安心感があった。



結構、彼とは話しながら
歩く道のりに距離はあるけど
そろそろお互い別の家路が
違える場所までさしかかっていた。



今日はこれくらいなのかなあ…



ため息ついたら、
彼が不思議そうな顔してた。





ふっと彼の向いてる方を
振り返ってみた。





あれッ!?なんだろう、アレ!?




彼が見ていたのはアレだったのかな?




薄暗闇の人気のない帰り道の途中、
向こうのビルの屋上に人影が見える。





ねえ?アレって…



え!!?見えるのかって?



見えるけど。


まさか自殺!?



なに言ってるの…

まずいでしょアレは。



このままでいいの??


止まるなって!!

ちょっ、なんで!!



彼が手を引っ張った。


アレは無視しろと。



なんかさっきの彼の顔つきと違って、


なんだか真剣そう。



わかったから引っ張らないで。



目を凝らすと少し長い髪がなびいている
ようにも見える…



女性???




すると人影が屋上から、
ふわっと身軽そうに跳んだ。




ややや、やっぱ。




今まで何度も一緒の帰り道で
気が付かなかったかと聞かれた。



なな、何が???



間もなくして…




グシャリッ!!



生々しい破砕音がした。


生野菜をバットでブチ割ったときのような、

おたまじゃくしを道路に投げつけたときの
弾けた音がより大きくなったような音。



今までここで、
この音も聞こえなかったかとも聞かれた。



私はただ全然気が付かなかった…

こんなの知らないよ…



とだけ答えていた。



アレ、本当に死んだの??


彼が黙ったままなので、
間抜けな質問をしてしまった。



彼がしてきた、
奇妙な質問の意味がわかったのは、

さっきのビルの屋上にまた、
人影が現れてまた…


髪がゆれて、身を投げて…


あ、また…






彼は帰るたびに、
ここでこの場所で。




アレって、時間かえても??


ああ。彼は頷く。



やっぱ、ずっとやってるんだ…



だから無視しろって。




頷く。





だから、

私が毎回気が付かなかったから

不思議そうに?







そ、だったんだ。



彼の返答は縦に首を振るばかり。






結構怖くなって、
聞こうかどうか迷ったけど。



じゃあ、アレはなんで
あんなことずっとしてるのかな?


やっぱ、見せたかったかな?




さあ?





え!?




わからん。

と一言。




ただ、目を背けた後でも、
延々黙々と続く、負の連鎖、絶望の螺旋



死のうとしてもしてないのか…

繰り返すことに意味はあるのか…


他者がどうとらえようと続けることに
意味はあるのか…




わからない…




私がそうであるように―


やっぱ、

彼にだって…
わからないことはあるんだよね。





スゥー…フワー




グシャリッ!! ■










posted by EVILITH at 01:44 | TrackBack(0) | メインコンテンツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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